「腰痛放浪記 椅子がこわい」夏樹静子 新潮文庫

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
ミステリー作家として著作も多く名の知られた作家なのになんと夏樹静子を読むのは初めて
である。これはミステリーでも小説でもなくノンフィクション。1993年から3年間、著者は
原因不明の激しい腰痛に悩まされる。椅子にも座れず外出さえおぼつかない。何よりも
「原因がわからない」ということが問題で、あらゆる医療、体力増強、神懸り的な事さえ
試していくのだがようやくたどり着いた「腰痛の原因」とは?
「背中から腰に鉄の甲羅を貼りつけられたような」苦しみのなか、心を打たれるのは著者の
「創作に向かう姿勢の誠実さ」で(それが逆に彼女の病状を追詰めるのだが…)夏樹静子の
小説作品も読んでみたくなった。この作品も個性的な医者、編集者、怪しげな治療師が
いたりして幾らでもユーモラスに書けそうな題材をそういう仕上げにしない所に著者の
真摯さを感じてしまう。