「北の黄金」田中光二 徳間文庫

北の黄金―書下し長篇時代活劇 (徳間文庫 (た8-45))
寛文9年、アイヌと和人が交易を始めたばかりの時代。魔の山に眠る金山を求めて
幕府隠密千早武四郎一行は蝦夷地北海道へ踏み込む。舞台設定や主人公は時代小説
のものでもこれは冒険小説、それも今時珍しいオーソドックスな秘境冒険活劇
である。田中光二は過去に秘境冒険小説を幾度も書いてきた作家でお膳立ては
しっかりと揃っている。なのに作品の分量が少なく文章が軽いから冒険小説の
重厚さ、醍醐味がなくてさびしい。仕掛けが膨らんでいかずコンパクトなまとまりを
見せただけで終わってしまう。文庫書下しで本格的な冒険小説を期待するのはやはり
無理だったか。題材は良いと思うんだけどなあ。活きの良い魚が回転寿司に変わって
いくのを見たような気分だ。