「ハウルの動く城」日本テレビ 金曜特別ロードショー

ハウルの動く城 [DVD]
宮崎駿脚本・監督。今夜の放映で初見。「もののけ姫」以降、宮崎駿作品からは
「物語の面白さ」より「メッセージ性」を優先する傾向が出てきたように思う。
前作「千と千尋の神隠し」は一回目観たときは受け入れがたく二回目を観てやっと
好きになれた映画だ。「ハウルの動く城」はお話がよく判らない上、訴えようとする
メッセージすら判らなかった。美術の美しさ、繊細な演出はさすがで目を見張る。
しかし部分部分の面白さが一本の太い流れにならないのは問題だ。呪いで老婆に
姿を変えられた少女ソフィーと魔法使いハウル、二人の恋愛がこの作品の芯に
なっている。ソフィーがハウルをいつ、なぜ好きになったかが全く描写されず肝心な
部分に感情移入が出来ない。若返ったり老けたり繰り返すソフィーの動画は良くても
倍賞千恵子の声が老若を演じきれていない。ハウルの声は木村拓哉、一本調子なので
キャラクターがはっきりしない。魔法と科学が混在した世界の戦争を変えていくのが
二人の愛なのに、恋愛ドラマがしっかりしていないので盛り上がりに欠ける。それに
この作品、舞台背景の説明を省略していて理解しにくい。終盤、ソフィーが奮闘して
ハウルを救おうとしたって他人事に見えてしまう。そして取ってつけたような強引
極まるラスト。これまでの宮崎アニメにあった世界を見せる力強さ、物語を語ろうと
する意思。これがすっぽり抜け落ちている。嫌な予感がして劇場では観なかったが
宮崎監督作品を観て「あとに何も残らない」というのは初めてだ。スタジオジブリ
最新作、宮崎吾朗監督「ゲド戦記」が現在、公開中。あまり良い評判を聞かないので
観に行く気は今のところ全くない。