「重力ピエロ」伊坂幸太郎 新潮社

重力ピエロ
「死神の精度」が良かったので積読の「重力ピエロ」を読む。
この本は「小説、まだまだいけるじゃん!」という帯にあった編集者気迫のコピーに
釣られて買ったんだよな。連続放火事件の現場に残された謎のグラフティアートから真相を
追う父子三人の物語。ページをめくれば「春が二階から落ちていた」という冒頭から
引き込まれあれよあれよと一気読み。「グラスホッパー」「死神の精度」と
読んできた中でも一番、作者の正義感が伝わってくる作品で爽快。
父親が癌で入院中だとか弟の春は母親がレイプ犯に襲われたため生まれた子供だったり
重苦しい背景を持った家族小説でもあるけど文章や会話が楽しくて読んでいる間、
ニヤニヤ笑いが消えなかったよ。ミステリー的な仕掛けも謎解きの要素というよりも
軽妙洒脱に読ませる効果として使われていたように思う。天才的な絵の才能を持ち、
自分の価値観に正直に生きてる春が魅力的でまた会いたいキャラクター。
「死神の精度」には「重力ピエロ」を読んだ読者にはちょっと面白い仕掛けが
あったことにも気が付いた。順番に読んだでたらきっとニンマリしてたんだろうなあ…。
伊坂幸太郎、読者になるのが遅れたのは残念。
以前にも書いたけど最初に買った「アヒルと鴨のコインロッカー」を読みかけなのに
電車の中で失くしてしまったおれは本当に不幸だった気がするのです。