「震度0」横山秀夫 朝日新聞社

震度0
阪神大震災の朝に700㎞離れたN県警本部の警務部長、不破義仁が姿を消した。
謎の失踪を巡って巻き起こる県警幹部たちの虚々実々の駆け引きと情報戦。


横山秀夫を読むのは「半落ち」以来か。「半落ち」は妻を殺した警察官・梶をめぐって取調官、
弁護士、新聞記者らのエピソードが語られる連作長編小説。
「感涙のラスト」と評判になったオチは奇麗ごとすぎておれは全く心が動かなかったが個々の
短編には「組織の中で生きるため、自身の矜持や誇りを捨てざるをえない選択を迫られる」
というテーマが共通してありここに一番感銘を受けた。けれど「震度0」は県警幹部6人が
保身と野心に汲々し県警内部をうろつき回る姿ばかり描かれてるので読むのが苦痛。
それぞれの駆け引きや情報が膨れ上がって魔物と化していく部分が狙ったほど面白味がなく
人間関係の嫌らしさのみがダイレクトに伝わってきてどうにも疲れてしまう。この作品、
ラストの仕掛けが「半落ち」と似ていて「またかよ!」と思ってしまったのも
マイナス要因で阪神大震災やホステス殺しの捜査を絡めた長編小説ならではの趣向も上手く
噛合ってない気がする。休日にのんびり読むにはいまいちの本だった。
ま、今回は良くない方の作品を読んでしまったのもあると思うので次回は慎重に作品を選び
横山秀夫作品に再度挑戦してみるとしよう。