「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ 福音館書店

セシルの魔法の友だち (世界傑作童話シリーズ)ジェニィ (新潮文庫)
おれは猫好きなんだけど、そのきっかけになった本がポール・ギャリコの「ジェニィ」。
白猫になってしまった少年と雌猫ジェニィの恋と冒険のお話で読み終わったその日から猫が
可愛く見えて仕方なくなってしまった。それから翻訳もあまりなく絶版の多いギャリコの
本を少しずつ集めては読み幸福感を味わっている。「セシルの魔法の友だち」は
少女セシルと、てんじくねずみジャン・ピエールの4話からなる恋物語。新刊でギャリコの本が読める、というのがまず喜びだし期待通りの素敵な内容だった。最初の話はセシルが
魔法の力でジャン・ピエールとほんのわずかの時間お話をするというもの。ここで2人?が
口にする言葉を読むと言い様のない幸福感に包まれる。児童書でも大人が読むに耐えるのは
最終話で大人のずるさによってセシルとジャン・ピエールが引き裂かれるという苦い展開が
あるためで、それを乗り越えて迎える暖かい幕切れに登場人物と同じように喜びを感じて
しまう。稲見一良が「ギャリコのような大人の童話が書きたい」って言ってたのがよく
判るなあ。セシルとジャン・ピエールが交わしたたった一言も「魔法の言葉」だけど
おれにとってギャリコの本は「魔法の言葉」のかたまりなんだよ。