「アンダー・ユア・ベッド」大石圭 角川ホラー文庫 

アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
19歳の頃、同じ大学の佐々木千尋とたった一度だけテーブルに向き合ってコーヒーを
飲んだ。三井直人にとってはそれが人生でもっとも幸福な瞬間だった。9年後、
見つけ出した彼女は結婚し家庭を築いていた。しかし一見幸福そうに見えた千尋は夫の
横暴や暴力に耐える生活を続けている。三井は近所に引越し観賞魚店を営みながら千尋
自宅を盗聴、窃視を繰り返す―なんとか彼女を救い出してやりたい。これまで大石圭
オールド・ボーイ」、「呪怨」シリーズなどの映画のノベライズだけ読んできた。
この本が初めてのオリジナル作品だけど読んでみたらノベライズといえど作者がいかに
自分の作品を書こうとしてきたかがよく判る。根底に通じるテーマがあるから。三井の
行動は完全にストーカーで不気味なものだけど千尋が暴力を振るわれるたび彼女の身を
案じこっそり救いの手を差し伸べる姿は健気で読んでいる間は完全に感情移入させられる。
異常な人物が登場し、どきつい描写があるにも関わらず胸が締めつけられるような切ない
感動が込み上げてくるのが特長でノベライズのときから思っていたのだがラストシーンが
上手い。この本を読んで乙一の「暗いところで待ち合わせ」を思い出した。どちらも
人付合いに不器用な青年が主人公で女性の自宅に侵入、直接的なコミュニケーションが
ないのに男女が惹かれあっていく話で似通った部分がある。読みくらべてみると面白い。