「六つのルンペルシュティルツキン物語」ヴィヴィアン・ヴァンデ・ヴェルデ 東京創元社

六つのルンペルシュティルツキン物語 (創元ブックランド)
これはちょっと変わった趣向が面白い本。

「うちの娘は藁から金糸を紡ぐことができます」
父親のそんな言葉が王様の耳に入り、娘は窮地に陥った。
紡がねば命はない。だが、できっこない――
そこで小人のルンペルシュティルツキンが登場し、
助ける「代わり」を要求するのがグリム童話の物語。

まえがきで著者はこの童話の矛盾点をシニカルなユーモアで指摘する。
「どうしてそうなるの?おかしいじゃない」そんな疑問を自己流に解釈し、つじつまを
合わせてつくられた物語が六編。つまりこの本には登場人物もお話もオチまでどれも同じ
話が入ってるわけ。登場人物の性格や立場が毎度変わり細かい描写が加えられることで
万華鏡を覗いているかのように同じものがくるりくるりと違う輝きを放ちはじめる。
理屈っぽい話になったり教訓的なのもあれば、めでたしめでたしだったり。作者の視線は
シニカルな割には毒がなく手作り感のある装丁がこの本を愛らしいものにしている。
ふんわりした読後感が心地良い本だった。星新一が民話や寓話をアレンジした短編を
書いていたがそれと似た味わいがある。