「ローレライ」

ローレライ プレミアム・エディション (初回限定生産) [DVD]
天王寺アポロシネマ8にてレイトショーで昨夜観賞。樋口真嗣監督。1945年8月、2発の原爆
が日本に投下され、南太平洋テニアン島では3発目の原爆を搭載した爆撃機が待機、標的は
首都・東京。最後の切り札となった伊507潜水艦の任務は援軍なしでアメリカ太平洋艦隊の
防衛網を突破し爆撃機の離陸を阻止すること。作戦成否の鍵を握るのは伊507に搭載された
特殊兵器、「ローレライ・システム」だった。もともとこの映画に関しては冷静じゃ
なかった。福井晴敏の原作小説「終戦のローレライ」を2003年の1月に読んであまりの
感動に放心状態になり、この正月休みは他の本が一切読めずしばらくは小説の場面が
明滅して消えなかった。作中「椰子の実」の歌が印象的に使われてるのだがちょうど
この頃、緑茶のCMが「椰子の実」を使っており見るたび曲が流れるので涙が溢れるという
困った事態になった。福井晴敏樋口真嗣が共同で作り上げたプロットを小説という形で
膨らませたのが「終戦のローレライ」で正確に言うと「ローレライ」は小説の映画化では
ないらしい。それでも小説と映画はまるっきり別物と割り切れるものでもなく何度も映画の
公式サイトで予告編を観て公開を楽しみにしていた。こんな気持ちを抱いて劇場に向かった
のは何年ぶりだろう?映画を観た感想をどう言えばいいのだろう?
「満足感はないのだがもう一度観たい」というのが正直な気持ちか。CGに関してはリアル
ではないし上手く馴染んでない部分も多々あるのだがこの映画はファンタスティックな
要素を持つものだしリアルじゃなくても充分納得のいくレベルに思えた。アニメーションと
実写の中間みたいな映画だしね。音楽、演出はテンションが高くて盛上がるし音響効果に
日本映画でこれほど圧倒されたのも初めてでパンフレットによるとジョージ・ルーカス
スカイウォーカー・サウンドサウンドデザインされたらしい。役所広司演じる艦長はじめ
俳優陣の演技も重厚なもので「ローレライ・システム」の要である少女パウラ役の香椎由宇
だけは下手なんだけど、ぎごちなさがかえって雰囲気を出しており可愛らしい。少年兵
(妻夫木聡)と甲板に出て空を見上げる場面はまるで自分が恋してるような気持ちになった。
実際この作品は目頭が熱くなる場面も何度かあった。けれど最後まで溢れかけた涙は流れる
ことがないまま終ってしまう。小説版では最後にもう一つ重要なクライマックスがあり
映画では省略されてしまっている。変更はあって当然だし同じにすることはないけどその
結果、まるでほとんどの登場人物がフェイドアウトするかのように消えた印象を残す
ラストになってしまった。お話では決着がついていてもその後を説明してるだけの
エンディングでは気持ちが宙ぶらりんになったままじゃないか。あのラストにしても艦内で
の記念写真を撮る場面が前にないと効いてこないと思うのだが…。この映画、ドラマが
最後で投げっぱしになり着地点が無いんだよ。それでも戦闘描写は迫力があるし印象に残る
場面もたくさんあるので「もう一度観たい」ってことになっちゃうんだけどね。映画では
「椰子の実」の代わりにヘイリーの歌う「モーツァルトの子守歌」が使われてるけど
これじゃ泣けんよな。劇中、香椎由宇が歌い出すとこが強引な吹替えで噴飯ものの場面
だったし。曲は綺麗で気に入ったからCDは買おうかな。