「呪怨」「呪怨2」大石圭 角川ホラー文庫

呪怨 (角川ホラー文庫)呪怨〈2〉 (角川ホラー文庫)
映画「呪怨」のノベライズ。
過去にあの家であった惨劇は一体何だったのか?とか奥菜恵は最後に何故ああいう運命を
たどるのか?だの、そもそも呪われた人ってなんでおかしくなっちゃうの?といった疑問が
これを読んでやっと判った。なるほど、そういうことだったのね。映画は怖がらせる…
というよりビックリさせるだけで最低限の説明すらしないから
こんなもん小説読まんと理解できるかっ!!
なんでも説明すりゃあいいってもんじゃないけど何が起こってたかすら判らなかった、
というのは酷すぎる。まあ映画の愚痴はこのぐらいにしてノベライズはなかなか良いです。
映画の一場面一場面がこの小説を読むことによって鮮やかに立ち上ってくるし、何より
ちゃんと怖い。「映像で見て怖い」ものが「読んで怖い」ものにつくりかえられている。
映画には無かったかなり残虐な場面もあるけど感銘を受けたのはラストシーン。哀切で
美しく、静謐なのにゾッとする恐怖が湧き上がってくる。
続けて「呪怨2」。こちらは映画を観ず、ノベライズのみ読んだ。心霊番組の舞台に
使おうってわけでテレビ局が呪われた家に乗り込むという「あ〜馬鹿やめろお〜っ!!」と
読んでる方も突っ込みたくなる面白そうなお話。残念ながら番組の関係者が怪異に襲われる
だけでテレビという題材はそんなに生かされていない。前作の繰り返しになって鮮度も
落ちているが「母性」が大きなテーマになっており感動させられる部分もある。新たな
脅威が出現したところで終るんだけどあの後どうなんのか気になる。「呪怨3」が
作られるという噂があるのでぜひ作ってほしい。続きのノベライズが読みたい…映画は
観に行かんがね。大石圭は以前読んだ「オールド・ボーイ」のノベライズも良かったし

僕が書いてきたのは、道端の石ころや雑草のように、
みんなから忘れられ、しらんぷりされてきた人々だった。
言いたいことも言えず、じっと俯いて自分の爪先を見つめてるような人々だった。

という「あとがき」の文章に惹かれた。そしてこの「呪怨」2作もそういう物語に
仕上がっており作者の思いは呪いの元凶、伽椰子にこめられている。そのため映画で
白塗りで這いずり回るあの不気味な女性に対して小説版を読むとなんと愛おしさすら
感じてしまう。現在公開中のハリウッド版「呪怨」も大石圭によって小説化されてるので
これの次はオリジナル作品を読んでみよう。