「オールド・ボーイ」大石圭 角川ホラー文庫

オールド・ボーイ (角川ホラー文庫)
1998年、平凡なサラリーマン、オ・デスはある日突然小部屋に監禁される。開放されたのは
なんと15年が過ぎた2003年―。誰が何のために?オ・デスの追求と復讐が始まる。
2004年度カンヌ国際映画祭グランプリ受賞映画のノベライズ。今日はこの映画を観ようと
思ってたのに腹を壊してしまったので断念。近所の本屋で本の方が売ってたので買ってきて
しまった。大元の原作コミックを読むという手もあったが全8巻だし文庫1冊の安上がりな
方にしたわけ(なんて安易な理由だ!)。もともとノベライズは嫌いじゃなくてかなり
読んでいる。最初に読んだのが「ET」(ウィリアム・コツウィンクル著)。これが抜群に
出来のいいノベライズで映画版にはないシニカルな視線が織り込まれており
ヴィレッジ・ブックスより再刊も出ているので一読をお薦めする次第。いまだに「ET」と
聞くとこの小説版の印象が先に浮かぶ。おかげでノベライズは面白いものだ、という
刷り込みが出来たため映画をそのまま文章にしただけのスカ本もずいぶん掴まされた。
さて小説版「オールド・ボーイ」、ノベライズにありがちの少し駆け足気味な書き方が
もったいないけどバイオレンス・アクション風に始まりだんだんと絡まった糸が
ほぐれるように真相が浮かんでくる展開がミステリアスで面白く読めた。耳慣れない
韓国名の登場人物たちが不思議と無国籍なムードを出している。「あとがき」の文章にも
惹かれるものがあるし今度は大石圭のオリジナル作品を読んでみたい。オ・デスが監禁中
テレビの教養番組から格闘技を身につけたり監禁されていた場所をつきとめるため餃子の
食べ歩きをするなどのちょっと変なデティールは文章にユーモアがないので映画で観た方が
面白いかもしれない。そうとうに暴力描写がキツイ映画になってそうで覚悟がいりそう。
小説じゃ最後に真相知ったオ・デスがとんでもない行動とるし、あれはあんまり映像で
観たくないなあ…。お話は全部知っちゃた上で映画を観て損したと思うのか、本と映画で
面白さが倍増するのか、なんにしてもメディアを跨いで同じ物語を味わうのは
そんなスリルもまた楽しかったりするんだよ。