「クールトラッシュ 裏切られた男」戸梶圭太 光文社カッパ・ノベルズ

クールトラッシュ 裏切られた男 (カッパノベルス)
プロの犯罪者、鉤崎は3人の同業者と組んでパチスロ屋を襲撃、
成功はしたものの裏切り者が金を持ち逃げ、奪還のため鉤崎の追跡が始まる。
リチャード・スターク(ミステリー作家、ドナルド・E・ウェストレイクの別名義)が書いて
いるプロの強盗を主人公にした「悪党パーカー」シリーズがとても好きでドライでクールな
パーカーの魅力、圧倒的なスピード感と簡潔なアクションで抜群に面白い。シリーズ中
何作か映画化されてるし近年にも第一作がメル・ギブソン主演の「ペイバック」として
リメイクされた(未見)。明らかに「クールトラッシュ」はこのシリーズを意識して書かれた
もので前半の雰囲気はそのまんま。鉤崎が警察の包囲網を突破しようと強奪する車が
田舎なので耕運機だったりクリーニング店名入りのミニヴァンなのが可笑しい。
「悪党パーカー」シリーズだと、ここから徹底した行動描写が主人公を輝かせていくが、
そうならない所が戸梶作品らしさ。「裏切り者」は鉤崎に反撃を開始するがどうしょうも
無い悪党どもが次々現れて暴力沙汰に巻き込まれその場しのぎのハッタリを繰り返すこと
になる。行動すればするほど最悪な状況に陥るあたりが作中最も面白く「冷徹なプロ」の
活劇より「チンケな悪党」のセコい騙し合いを描いた方が本領を発揮しているのが
この作家らしい。ラストには英文で次回作の予告があるのでシリーズ化の模様。今後
「悪党パーカー」ほどお気に入りになるかは微妙なとこでこれ、えげつないからなあ。
男性としては読んでて股間に激痛が走るような場面もあったし…思い出しただけで痛そう。