「ネフィリム 超吸血幻想譚」小林泰三 角川書店

ネフィリム 超吸血幻想譚
少女ミカとの約束で自ら血を吸うことを禁じた最強の吸血鬼・ヨブ。吸血鬼に殺された
家族の復讐を誓い、退治組織に入った男・ランドルフ。吸血鬼を食らい成長する
「追跡者(ストーカー)」と自称する謎の男・J。三つ巴の戦いを描くホラー・アクション
先日「ヴァン・ヘルシング」を観た帰りに、同じく吸血鬼との対決を描くアクションもの
らしいので勢いで買ったのだが作品から受ける印象が「ヴァン・ヘルシング」にそっくり。
全編がほとんどアクションシーンで、ランドルフは科学兵器を駆使して戦うわ、吸血鬼の
体が破壊されて再生する描写が再三あるわ、主人公と敵の間に過去の因縁があるようだが
明かされず続編を匂わせて終るところなどよく似ている。スプラッター描写が濃く人が
ばんばん殺されるし吸血鬼は手足は千切られ何百発もの銃弾を食らい内臓ぶちまけて死ぬ。
子供が惨殺される場面なんて友成純一読んで以来だ。後半、ランドルフがあの手この手で
吸血鬼を無惨に倒していくくだりなどグロテスクを通り越して痛快さを感じてしまう。
スプラッター場面の力の入れ様に比べて、ほとんど人物描写がないのが困りものでせめて
ヨブの正義を目覚めさせるミカを、もうちょっと描き込んでくれないとなあ。そもそもこの
お話、いつの時代で何処が舞台なんだ?近未来らしいのは判るけど説明がまったくない。
結局、なんのための戦いだっだのか???そのせいか読み終わるとアイデアが詰まってる
わりに「頭の悪いバイオレンス・アクション小説」めいた印象が残る。ノベルズだったら
納得いく面白さだけどハードカバーでは高かったかな。