「鉄槌!」いしかわじゅん 角川文庫

鉄槌! (角川文庫)
もう1冊、昨年読んだ不条理な法廷闘争を綴ったノンフィクションを紹介。
漫画家・いしかわじゅんは厳寒の山中、夜行スキーバスに置き去りにされる。後続のバスに
拾われ事無きをえるのだが、置き去りにしたバスの運転手も乗務員も謝罪しようとしない。
怒りの余り当の旅行会社をエッセイ漫画で批判すると逆に「謝罪」を求められ「名誉毀損
で訴えられる羽目になる。雇った弁護士はちゃんとした連絡をよこさない、必要書類の
日本語が変、しばらくすると当の弁護士がいつのまにか別人に!旅行会社は都合のいい嘘
ばかりを主張し、その場にいなかった「証人」まで出現する。怪しい人物が続々と現れるし
文庫のための新章で登場する「偽証人」の正体など良く出来たミステリー小説を読んで
いるかのような迫力。この本に出てくる関係者はなんと全員実名だそうである。
以上2冊読んでみると法律や裁判というものがいかに「当たり前のことを主張する個人」を
小突き回すように出来ているかがよくわかる。特に痴漢冤罪はいつ我が身に振りかかっても
おかしくないからねえ。普通に電車に乗るのが怖くなった。