「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」巻ノ一 夢枕獏 徳間書店

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1
執筆期間足掛け17年の大作、全4巻編成での刊行開始!まずは1巻目を読んでみた。
西暦804年遣唐使として長安入りした修行僧・空海の活躍を描く歴史伝奇ロマン。物語は
まだ序盤だし、今のところそんなに派手な展開もない。それが読み出したら止められず
べらぼうに読み心地がよい。作者の作り出した空海像の太くて目標に向かって一直線に進む
豪快さに目が離せない。唐の文化、宗教や宇宙といった思索が文中織り込まれるが平易で
判りやすい文章のため読みやすく知的興奮をともなって不可思議な現象や妖物との対決に
わくわくするうちに1巻目読了。後半、猫の妖物との決着がなかなかつかず、いよいよ…
というところで以下次巻というのは憎らしいね。2巻も同時発売なので買えばよかった。
この物語どんどん面白くなりそうな予感がある。夢枕獏は「混沌の城」「上弦の月を喰べる獅子」「風果てる街」等心に残る作品がけっこうあるのにちゃんと読んでなかった作家だ。
この人は長大なシリーズが沢山あり、ほとんどが継続中でせっかちなおれは待ちきれないんだよなあ。作中空海が言う「早く咲かせるのはいいが、準備のないうちに、無理に咲かせた
花はじきに枯れてしまう」これは夢枕獏の創作に対する姿勢でもありこの作品にしても
17年という時間は必要だったのだと思う。続巻が9月までに全て出るので一気に読める
のはたいへんな贅沢を味わえるのかも知れない。2ヶ月後に出る4巻(最終巻)では
「大輪の花」が咲くことを期待している。