「おめでとう」川上弘美 新潮文庫

おめでとう (新潮文庫)
全12編の短編集。川上弘美の作品について書くのはこれが初めて。しかしこの本、
「おめでとう」が最初に読んだ本ではない。二周年のこの日にこのタイトルを
持ってきたかったのである。先日、川上弘美の似顔絵を描いてここにアップした。
あの絵はこの本のカバーイラストを真似て色付けしてある。思い通りに上手くは
いかなかったけどね。最初の短編「いまだ覚めず」が女性の同性愛を扱ったもので
少し驚いた。次の「どうにもこうにも」が幽霊が出てくるお話。その他のごく普通
の日常を扱った作品を読んでも文章は古風で独特のリズムがありシュールなムード
に包まれている。ほのぼのした雰囲気があり幸せな気持ちになれる文章の背後には
何かが終ってしまうこと、時が過ぎてゆくことに対する哀しみや孤独が漂っている
ように思う。最後に納められた表題作「おめでとう」にはそんな哀しみや孤独が
幻想的に表現されており不思議な気持ちになって本を閉じることになるのである。