写真日記(写真日記風景) 軍艦アパート探訪

uminekob372006-02-10

「でき上つた 下寺町御殿」(大阪毎日新聞、昭和5年11月28日付)。完成間近の団地を新聞は華々しい見出しで伝えた。木造長屋がひしめく一帯に出現した鉄筋住宅は、羨望(せんぼう)の的となった。部屋は2Kで、水道、ガス、水洗トイレ、ダストシューターや児童遊技場もある。加えて、「最高が月10円10銭、最低6円90銭といふべらぼうなやすさ」。庶民にも手の届きそうな夢の家だったに違いない。

昭和8年、大阪市浪速区に建設された現存する日本最古の鉄筋公営住宅です。この近くは
何度も歩いているのですがこの軍艦アパートは読売新聞の記事で初めて知り、出かけて
きました。取り壊しが決定し周りでは電線の取り外し作業が静かに行われています。

近くの新しいマンションと対比させるとアパートの古さが実感できますね…。住人さんは
ほとんどがすでに立ち退いているようで人の気配がありません。洗濯物を干している部屋が
わずかに見受けられたのでまだ残っている方もおられるようです。内部に入ると階段が
狭くて天井が低く異世界の魔城にいる気分。窓枠が壊れてたり、まるまる無かったり。
屋上に出たらいきなり人がいたのでびっくりしました。年配の女性で少しお話をしてみると
住人さんではなくこの方もニュースで取り壊しを知って来たそうです。

古びた物干とBSアンテナが並んでいるのが何とも不思議な光景。扇風機、学習机、食器、
ストーブ、玩具、テレビ、ペットボトル…いろんな物が散乱しており住んでいた人の生活を
物語ります。雑誌や本もたくさん落ちていて手塚治虫の「火の鳥」を発見。見付けた場所が
場所だけに時の移ろいを感じます。

屋上から見下ろすとこんな感じ。枯木がまるで巨大な蜘蛛の巣のように見えます。
あちらこちらの屋根を猫がのんびりうろついていました。一匹画像に納めようとデジカメを
向けると逃げるどころか睨み返してきました。いい根性の猫だ。

日も暮れてきました。この建物はあとわずかの時間で消えてしまう運命です。出会った
猫たちの住処が無くなるのでまたどこか良い場所を見つけてくれることを願います。
素敵な時間を過ごせました。ありがとう。そして、さようなら。