「チャーリーとチョコレート工場」

チャーリーとチョコレート工場 特別版 [DVD]
動物園前シネフェスタにて観賞。R・ダールの児童小説「チョコレート工場の秘密」を
ティム・バートン監督が映画化。世界最大で世界一有名なチョコレート工場。経営者の
ウィリー・ウォンカは世界中の子供たちから抽選で5人だけ工場を見学する権利を与えると
発表。大騒ぎの末、選ばれたのは貧しいチャーリー少年を含む5人。原作は田村隆一訳の
ものを10年ほど前に読んだ。児童小説にしてはグロテスクなユーモアに驚いたがこの映画は
ティム・バートン監督の毒々しいセンスがさらに上塗りされていて、けたたましい。
ジョニー・デップ演じるウォンカはケバケバしい服装で異様に蒼白い顔で登場。子供っぽく
神経質な態度はマイケル・ジャクソンを連想させて見る者を不安にさせる。チャーリー以外
の子供たちは可愛げのない、どきつい性格でそれゆえに見学中、一人ずつ悲惨な末路を
辿ってゆく。この度に毎回工場内で働く小人が大勢出てきて踊り歌う。この小人が全員
同じ顔でそれも荒井注を色黒にしたような中年男というのがまた不気味。キンキン声で
歌い踊る様はまるで醒めない悪夢を見てる気がしてくる。原作にあった教訓めいた要素は
小さくなり嘲りや悪意に満ちた黒い笑いが充満、2001宇宙の旅、サイコ、蠅男の恐怖等
過去の映画のパロディを畳み込むように見せるくだりは大笑いしてしまった。原色と奇想に
彩られたチョコレート工場のヴィジュアルも見ごたえがあり小説の映画化として面白い。
けれどもウォンカという人物の味付け、ラストに付け足されたウォンカと父のエピソードを
見ても、ここにはやはりティム・バートンの屈折した世界が広がっているように思う。
なんにしてもこれは癖のある映画で見終わった後、「チョコレートを食べたい!」と思う
人と「チョコレートなんか見るのもうんざり」という人と大きく別れるんじゃないかな。
おれは映画は楽しかったけどチョコレートは当分の間、食べたくないです。