「天国からの道」 星新一 新潮文庫

天国からの道 (新潮文庫)
星新一没後に出た単行本未収録の作品集「気まぐれスターダスト」を2分冊で再編集し
「天国からの道」「ふしぎな夢」として刊行。まずは「天国からの道」を読んでみる。
新旧の作品が一緒に収録されており巻末に初出が明記されてないのでよく判らないが
デビュー以前の習作が多く含まれてるように思う。明らかに初期と判る作品は文章がくどく
洗練されていないしオチが唐突で星新一らしいスマートさがない。収録中「Q星人来る」
では異星人に女遊びを説明しようと男が草むらにころげ回ってひとり実演、ガソリン酔い
して潰れるといった星新一が書いたとは思えない珍妙な場面まである。露骨な描写は
ないもののセックスを正面から扱った作品もあって意外な一面を見れるのが面白い。後の
完成された作風を知っていると未熟さが目に付く短編集で逆に言えば星新一を読み込んでる
人ほど「磨かれる前の原石」を見る楽しみがある本。カバーイラストがやけにメルヘン調
なのは違和感あり。久々の新潮文庫なので真鍋博のイラストだったら良かったのになあ…。えっ?2000年に亡くなってたの!そりゃ無理だわ…。