「乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル」牧野修 ソノラマ文庫

乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル (ソノラマ文庫)
宇宙標準暦10414年。人類はもはや、宇宙の片隅に追いやられていた。
かつて、人類が惑星開発や病人介護のために造った「擬人種」に支配されていたのだ。
そんな中、辺境の惑星に住む敬虔な少女、ピュセルが「神」の啓示を受けた。
人類を解放せよ、と。少女は戦士となり、部下を探し、遙かなる惑星オルレアンを目指す。


普通に読むとあまりにストレートなSFアクション小説だがこれが「新造人間キャシャーン」を
下敷きにして書かれた小説だ、ということを知ると読み方が変わってくる。ピュセルは
変形し乗り物になる犬型の人工生命体を従えてるし改造手術を受け無敵の超人になる。
このくだりで

たった一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体。 鉄の悪魔を叩いて砕く、キャシャーンがやらねば誰がやる。

抜け抜けとこの口上を文章に織り込んでいるので笑ってしまった。
文体が糞真面目でイラストの羽住都キャシャーンそっくりの甲冑姿を丁寧な絵に
しているのでなおさら可笑しい。GyaOで「新造人間キャシャーン」を配信していて時々
観ているんだけど悩めるヒーローだったキャシャーンに比べ神の言葉を揺るぎなく信仰して
闘うピュセルがだんだんと不気味に見えてくる。「あとがき」で作者は
「単純明快な勧善懲悪活劇です」とは言ってるものの実はこの作品、読み方によって清く
正しい美少女がグロテスクな狂信者に見えてきたり、勧善懲悪の裏側にある猛毒に
気が付いたりするような内容で「単純明快」ではなく屈折しまくっているんだよ。