「ミリオンダラー・ベイビー」

クリント・イーストウッド監督/製作/音楽。不遇な生い立ちながらもボクサーとして成功を
夢見るマギー(ヒラリー・スワンク)は名トレーナー、フランキー(C・イーストウッド)に
弟子入りを志願する。頑固で女性ボクサーに偏見を持つフランキーは一蹴したものの熱意に
負け指導を始める。素質と闘志を持つマギーは頭角を現し連勝街道を突き進む。
梅田ピカデリー1にて昨日観賞。反目していたマギーがフランキーと親子以上の絆で結ばれ
女性ボクサーとして成長していくまでが派手な音楽や音響効果を使わずストィックで繊細な
タッチで描かれ引き込まれる。中盤の100万ドルを賭けたタイトルマッチはファイトシーン
としても優れたものだがこの試合でのまがまがしい不安感の出し方がたいへん上手く
それだけに後に起こる出来事に強烈なショックを受けた。これ以降展開ががらりと変わり
この映画が実は「ボクシングの闘い」だけではなく「人生との闘い」を描いた物語だという
ことに気が付く。後半は画面から目を背けたくなるほどに辛くて悲しく凄絶でマギーの
家族が登場する場面の容赦のない描きようは寒気がするほど。マギーとフランキーが
最終的に決断する「人生の選択」には叩きのめされる思いがした。気になって文庫本を
買い、原作短編を読んでみたが同じ筋書き、スクラップという元ボクサーの雑用係は映画の
ほうで追加された人物でモーガン・フリーマンの好演もあり作品に膨らみと救いが出た
ように思う。結末から投げかけられるメッセージの重さに打ちのめされ席を立てなくなった
というのは初めての経験だった。前作「ミスティック・リバー」も良かったけど今回は
イーストウッド本人の主演というのがとても嬉しい。