「TVJ」五十嵐貴久 文藝春秋

TVJ
民放テレビ局の社屋25階建てのニュー・ミレニアム・ビルが武装集団にジャックされた。
拘束を逃れた経理部員の高井由美子は人質となった婚約者を救おうとただ一人奮闘する。
日本を舞台に「ダイ・ハード」を狙った小説では真保裕一の傑作「ホワイトアウト
(映画は凡作に仕上がってた)があるがこの「TVJ」は「ダイ・ハード」女性版。ヒロインが
ごく普通のOLで腕力もなく銃器も扱えず最後まで圧倒的弱者のままである。彼女が
「職員なのでビル内部に詳しい」という利点のみでいかに状況を逆転させていくか?
というのが面白さの作品。あまりにも「ダイ・ハード」等サスペンス・アクション映画の
定石通りに展開するのでいくらなんでも先が読めてしまうのはちょっと惜しい。それでも
独自の仕掛けはしておりさりげない伏線の張り方は抜群の上手さ。プロポーズされた
ばかりのヒロインがボロボロになりながら立ち向かう姿はいじらしく応援したくなる。