「一心剣」田中光二 徳間文庫

一心剣 (徳間文庫) 
戦国時代を背景に故郷を襲われ父を殺された少年・霧丸の成長と復讐を描く。
冒険小説の面白さを教えてもらった作家が田中光二で初期の「失われたものの伝説」
「大いなる逃亡」は今でも好きな作品だし現在は溢れかえっている「剣と魔法」の
ファンタジー小説も早くから書いていてその楽しさを知った。最近は架空戦記作家になって
しまい読んでなかったけれどこれは初の時代小説なので手に取ってみた。宮本武蔵
真田十勇士が物語に絡んできたり、霧丸がある種の超能力を持ち異常な切味を持つ刀が
地球上にない金属で出来ている、などSF的設定や剣豪小説の趣向まで盛込んでいるものの
やはり文庫1冊では中途半端。せっかくの仕掛けも炸裂せず後半は粗筋小説と化し復讐物語
としても曖昧な結末を迎えてしまう。うーん、続編が書かれるのかも知れないにしても
これでは物足りなさすぎる。