「神州魔法陣」上下2巻 都筑道夫 富士見時代小説文庫

神州魔法陣 上巻 (時代小説文庫 6-1)神州魔法陣 下巻 (時代小説文庫 6-2) 
江戸の町で続発する若い娘の変死!独楽使いの巳之吉と素浪人、端午は謎を追うが
事件の裏には江戸を壊滅させるほどの大陰謀が隠されていた!
一昔前の文庫本なので字が細かく詰まってるのだがそれ以上に内容がとても濃い。
三部構成で江戸の怪事件を追う捕り物帖風の第一部、怪しげな人物が続々登場し
サスペンスフルなのに旅の情緒が漂う道中記の第二部、宿敵・平賀源内との対決を
スペクタクルに描いた第三部まで次々と絶体絶命のピンチを繰り出し剣戟場面が
ふんだんにあるので作者の言う通り「読みはじめたら、やめられない小説」になっている。
意外な伏線が後に効いてきたり敵との知恵比べがあるのはさすが推理作家、都筑道夫
死人が何度も生きかえって襲って来たり源内が仕掛けてくる幻術の不気味なイメージは
怪談を得意とした作者の独壇場で堪能した。古風な講談調の文章がなかなか気分を
出している。登場人物たちにも愛着がわいて別れるのが惜しいのにエピローグの
そっけなさといったらもう…このドライさも都筑道夫らしいんだけどね。
体調崩して一気読みできなかったのが悔やまれる。
前に読んだ角川文庫の「神変武甲伝奇」が面白かったので「神州魔法陣」は探していたが
なんと桃源社版の単行本と同じく時代伝奇の「幽鬼伝」(光風社ノベルズ)まで
見つけてしまった。都筑先生は昨年亡くなられたけど読んでない作品も多いのでまだまだ
楽しめそう。作品も復刊されつつあるし…できれば「神州魔法陣」も再刊されることを願う。