「グラスホッパー」伊坂幸太郎 角川書店

グラスホッパー
人気上昇中の作家だけどこれが初読。いや「アヒルと鴨のコインロッカー」(東京創元社)は
半分ほど読んだけどね。電車で読みながら居眠り、起きたら本が手から消えてたという
悲しい出来事があったのです。けっこういいとこだったのにぃ〜。
亡くなった妻の復讐のため悪徳会社に潜り込んだはいいものの事故に見せかけ相手を
殺害する「押し屋」とおぼしき男「槿」を追うはめになる元教師の「鈴木」
目の前に立つだけで相手を絶望的な気分に追い込む「自殺屋」の「鯨」
ナイフ使いで上司の岩西にこき使われる「蝉」
「鈴木」「鯨」「蝉」の3つのパートが交互に組み合って物語が出来ている。
やたらとジャック・クリスピン(アーチストらしい)の言葉を引用する岩西、鯨が過去に
殺害した人々が幻のように現れ話かけてきたりデティールがなんともシュールな上、会話が
豊潤。三者三様のエピソードが連鎖反応をおこして絡まり殺し屋同士が対決する。血生臭い
場面もかなりあるのだが読み終わって残るのは爽やかさと少しの物悲しさでそれは
殺し屋たちがクールで人間性がどこか壊れてるのに対しごく普通の人である鈴木が
亡くした妻を未だに大切にしており槿の家族との交流が余計に印象に残るからだと思う。
軽妙洒脱でオフビートな小説だけど疲れ気味な最近、不思議な安らぎがあるのが魅力で、
こうなったらもう1回「アヒルと鴨のコインロッカー」買いにいくとするか。
しかし今現在あの消えた本はどこにあるのだろう?