「ビタミン」すえのぶけいこ 全1巻 講談社別冊フレンド・コミックス

ビタミン (講談社コミックス別冊フレンド)
懲りずにすえのぶけいこ、また読んじゃったわけ。ところが――
受験を目前に控えた中学3年生鑓水佐和子がイジメのため不登校に追い込まれ…前半は
ほとんど「ライフ」と同じ話。コンパクトな作品のため「ライフ」のように描写が暴走して
ないからイジメの場面など辛いながらも鬱にはならず読める。しかし「ビタミン」という
作品の素晴らしさは佐和子が「漫画家になる」夢を持つことがきっかけで無理解な母親、
不登校に対する世間の偏見を乗り越え自分の道を歩んでいく後半の展開にこそある。
佐和子が自身のイジメ体験を漫画に描くところなどたった2ページしかないが実体験から
作品を書いているであろう著者の「勇気と決断」が読んでいて直に伝わってくる。物語の
ラスト、自ら卒業式に参加する佐和子の凛とした表情、そして彼女の「ある行動」には心底
カタルシスを受けた。前半の暗さを補って余る爽快感!自分が大人になってから鬱病になり
社会復帰に同様の苦労をしたのでこの作品の真摯さには本当に感動した。学校やイジメから
逃げることは構わない、大切なのは自分自身から逃げないことだ、ということをこの作品は
教えてくれる。これが良かったら「ライフ」を…と言えないのが辛いのよねえ。こっちは
真摯さが過ぎて恨みつらみがぶちまけられちゃってるもんな。「ビタミン」の方はイジメや
不登校に悩んでいる人にとって力になる内容だから一読してみてはいかがでしょうか?