「マーズ」全3巻 横山光輝 秋田文庫

ASIN:B00007C91S
海底火山の噴火で突如出現した火山島で発見された謎の少年・マーズ。彼は宇宙人が
地球人を滅ぼすためプログラムされた六神体の攻撃に巨大ロボット・ガイアーを操り
立ち向かう。ガイアーが寸胴の巨神のようなロボットで懐かしい気分になる。襲ってくる
六神体は巨大な顔だけものや球体、土偶みたいな形のものなどデザインが摩訶不思議。
ガイアーは圧倒的なパワーを持ち六神体よりもはるかに強いのだが敵は戦略的に攻撃を
仕掛けマーズを苦しめる。ロボット同士の戦いは大コマをふんだんに使っていて豪快。
しかし全編のムードはむしろクールといってもいいぐらいで主人公マーズは冷静に戦いを
続ける。六神体を全て倒しても地球を滅ぼすことになる、という設定もあって少年漫画的な
カタルシスはあまりなく衝撃のラスト。実はその少年漫画らしくないところが「マーズ」の
魅力。昔のロボット漫画を今の目で読むと幼稚すぎたりするが「マーズ」は敵味方の
どちらを善悪とも決め付けないフェアな描き方で政治家や防衛庁の動きなどがしっかりと
しており、ここに込められた風刺は今でも通じる内容を持っている。敵ロボットの突飛な
デザインや作品に漂うペシミズムには「新世紀エヴァンゲリオン」を先取りした雰囲気も
あって絵柄以外は古さを感じさせない。