「かぶき奉行」えとう乱星 ベスト時代文庫

かぶき奉行―織部多聞殺生方控 (ベスト時代文庫)裏小路しぐれ傘 (学研M文庫)
池波正太郎鬼平犯科帳」シリーズは少し読むのをセーブしている。長い期間に渡って
書き継がれたシリーズだし慌てることはなかろう。現在文庫時代小説がブームで出来れば
現役の時代小説家で末永く読める作家がいないものかと思いいろいろ読んでいる。
えとう乱星は光文社文庫の伝奇時代小説アンソロジー「伝奇城」で派手な作品の多い中、
地味ながらも端正な剣豪小説「影打ち」を寄せており印象に残っていた。「かぶき奉行」は
斬り捨て勝手の殺生方に就任した織部多聞の活躍。連作小説であり一本の長編小説としても
読める構成で内容が濃い。展開がめまぐるしく活躍しそうな生きのいい脇役が出てきたと
思うと早々と殺されたり退場したりするので勿体ない。時代と主人公が変わって続編に
あたる「ほうけ奉行」があるのでこれも読みたいが織部多聞が爽やかでこれ一作で退場も
寂しい。えとう乱星をもう一作、「裏小路しぐれ傘」学研M文庫は市井もの。こちらは
チャンバラは終盤まで抑えているのだが人物が生き生きとしているので躍動感があり痛快な
一編。これはどうやらシリーズが続きそうなので楽しみにしている。