「扉は閉ざされたまま」石持浅海 祥伝社ノン・ノベルズ

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)
以前「ソウ―SAW」を観た後、岡嶋二人の「そして扉は閉ざされた」を読んだように今回は
SAW2/ソウ2」を観た影響で閉鎖状況での推理小説を読みたくなり選んだのがこの本
「扉は閉ざされたまま」である。タイトルからして先の岡嶋作品「そして扉は閉ざされた」
を確実に意識しているのだろう。成城の高級ペンションに同窓会で集まった大学時代の旧友
7人。序章で殺害場面があり被害者と犯人は始めから明かされている。犯人は殺害後密室を
作り上げ現場には外部から入室できないようにした。殺害されたとはつゆ知らずいつまでも
部屋を出てこない友人を気遣う同窓会メンバー。参加者の碓氷優佳だけは事態に疑問を持ち
ただ一人、犯人を追い詰める。正直言って映画「ソウ」シリーズとは閉鎖状況があるという
程度でほとんど共通点がない。「SAW2/ソウ2」に無かった「限られた状況の中数少ない
手掛かりから推理し真実を追う」趣向が素晴らしく徹底的に展開する。こういうのが
読みたかった。読み進むにつれ事件の真相に近づく一方、密室となった部屋を壊して入室
出来ないという制約がどんどん大きくなっていく。登場人物が7人でも実質は犯人と
探偵役・碓氷優佳との火花散る一対一の論理対決だ。まったく無駄のない構成で最後の
最後に扉が開くまで物語の緊張感が緩むことがない。一気読みの一冊。