「アイ・ラブ・トラブル」ピーター・ブラケット 集英社文庫

アイ・ラブ・トラブル (集英社文庫)
10年以上前に公開された映画のノベライズ。カバーに主演のニック・ノルティ
ジュリア・ロバーツのスチールを使っている。「アイ・ラブ・トラブル」という映画が
あったのを初めて知ったし普通だったら今になってノベライズは読まない。しかしこれが
お気に入りマックス・A・コリンズの筆による作品と知ったら話は別だ。鉄道事故の真相を
追う男女の新聞記者。それぞれライバル紙に所属し、お互い抜け駆けをしようと騙し合い
ながら共に行動をする。一章ごとに男性記者のピーター、女性記者のサブリナと語り手が
代わるという凝った作り。この語りが反目しつつ互いが惹かれていく展開をスリリングに
読ませる。事件解決後2人が共著で顛末を記したのがこの本、「アイ・ラブ・トラブル」
ってわけだ。こういう仕掛けまでわざわざペンネームを変えてコリンズは凝っている。
ノベライズなので忘れられていく運命にある本だがミステリーの部分もしっかりしていて
小粒の洒落たサスペンスとして充分読める内容。