「世界の中心で、愛をさけぶ」片山恭一 小学館

世界の中心で、愛をさけぶ
…「ノルウェイの森」の後に読むといくらなんでも陳腐な内容。両作を比較してやろうと
思って今更読んだけどね。どちらも物語はよく似たところがあるんだけど、それだけに
ぎごちない会話、比喩のダサさ、作りすぎで唐突な展開…良くない部分ばかりが目に付いて
しょうがない。高校生のカップルが、自分たちのことしか見えていないのは仕方ないと
しても周囲の大人達がそれに付合ってるってどう考えてもおかしいぞ。
「恋愛が至上のもので何をやっても構わない」みたいな傲慢さがどうにも嫌でそういう
意味でタイトルはよく内容を表してるのかも知れない。人の死を悼んでるかのように見えて
他人の大切な「何か」を踏みにじる主人公のデリカシーのなさはちょっと不気味だと思う。
恋愛している相手以外の他者との関わりは人生にあるはずだし大切な人が死ぬのは
恋人だけとは限らない。そういった部分をきっちり描きこんである「ノルウェイの森」の
後だとここに描かれる「死」はあまりに嘘臭い。両作のラストシーンが対照的なのには
象徴的なものを感じてしまう。