「アフターダーク」村上春樹 講談社

アフターダーク
脚本のト書きのような現在形を多用した文章、映画のカメラワークのように移動する視点。
各章の見出しに時計の文字盤が掲げられ深夜12時頃に始まった物語は朝の7時に終る。
その間の約7時間に19歳の少女マリが関わる出来事を読者はリアルタイムで見ているかの
ように追うことになる。読み終わってみると一つの長編小説というより三つのエピソードが
絡まりあって進行するオムニバスのような印象を受ける。「回転木馬のデッドヒート」が
もっとも好きな村上春樹作品で「アフターダーク」のインタビュー小説に近い部分は
ちょっと似た感じで読んでいて安らぎをおぼえた。長編小説としては文体が特異だし
はっきりした着地点がないので物足りない。