「空の境界」上下巻 奈須きのこ 講談社ノベルズ

空の境界 上 (講談社ノベルス)空の境界 下 (講談社ノベルス)
忙しいは疲れて眠いわで日記が書けなくて辛かったー。
もともと同人小説で爆発的人気だった作品であるということと、作者奈須きのこ
美少女ゲーム月姫」のシナリオライターである、ということしか予備知識がない。
そもそも同人小説を読んだことないし、その手のゲームもやったことないんだよなあ…。
ま、いいか。それならごく一般読者の立場から感想を書いてみよう。
事故で昏睡から目覚めた少女、両儀式が記憶と引き換えに「この世の存在すべてを殺す」
能力を得、ナイフ一本を武器に怪事件や殺人鬼と戦ってゆく。
基本的な物語はこうだが連作形式で語られるエピソードは必ずしも順番通りでないし
主観がめまぐるしく変わりそれぞれの回想で語られる場面を読者は一本の流れとして
織り直す作業を余儀なくされる。エンターティメントとして軽く読める作品では
決してない。作品世界を読み解こうとし、登場人物の心理に潜り込もうとするなら
ひじょうに濃い読書体験が得られる作品だという印象を受けた。
おれの場合この作品は興味深く読めるものの上巻の異端者的な人物が追いつめられ凶行を
繰り返し…という展開と魔術師・蒼崎燈子のドライすぎる台詞回しはなんというか
精神的に疲れた。この作品の登場人物たちはみな人間性を失った自分にとまどい
誰かを呪っている。この作品を読んで連想した作家が3人。
京極夏彦(過剰な薀蓄やロジックで世界を作り上げる)
乙一(登場人物の乾いた感じ、推理小説的手法の匠さ)
菊地秀行(人知を超越した魔人の戦い、その表現)
とくに「矛盾螺旋」のエピソードなど人を狂わせるマンションや伏線の上手さは
ぞくぞくしたね。感想をまとめると「とても内容濃くて読み応えあるけど精神的に疲れた」
ってことかな?内容は過剰なまでに濃いが、登場人物の自意識も過剰なんだよね。
美少女ゲームがわからんと言いつつも雰囲気知ろうと奈須脚本のゲーム
Fate/stay night」体験版ダウンしてやってみたり(面白そうだけどプロローグだけ…)
その手のゲーム雑誌近所の本屋で買ってきて読んでみたら…げぇっ!こういう世界
なんですか!?あの本屋行きにくくなったなあ、今回この事に関して自分を褒めてやりたい。